2021年11月30日 一般質問Q&A 質問者:やない克子

練馬区議会 議会放映 (discussvision.net)

 

  1. 区長の基本姿勢について

説明:「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」、いわゆる重要土地調査規制法が成立。当初、政府は外国資本による土地購入によって安全保障上の懸念があり、法制化の議論が始まったと説明していた。ところが、できあがった法案は、米軍や自衛隊の施設、原子力発電所周辺、国境離島などに於ける注視区域、特別注視区域の指定をはじめ、そのほとんどを政令と内閣総理大臣の権限に委ねる特異な建てつけになっている。

改めて法律を読み直してみると、立法府の関与無く、内閣総理大臣の権限によって、当該地域内に居住する住民とその関係者には、調査される内容、対象、行為が何であり、何が刑事罰になるのかさえわからない問題点を多々はらんでいる。

参議院内閣委員会で、参考人をつとめた馬奈木厳太郎弁護士は、この法律の根底にある「特定の国と特定の国の人を潜在的な脅威とみなす」発想や重要施設周辺の住民を犯罪予備軍とみなす発想は、憲法の平和主義に反すると指摘している。また、内閣総理大臣の権限に自治体が巻き込まれることになり、地方自治を侵す法律と言わざるを得ない。

 

質問: 法案審議中に政府が例示したように、練馬区は「特別注視区域」を抱える自治体となることがほぼ確実である。その結果、区民のプライバシーや不動産価値の低下などの財産権が侵害される恐れがあることから、自治体の首長として「防衛は国の専権事項」とする思考停止をすべきではないと考える。政令は、次年度早々に定められると聞いている。首長として練馬区民の暮らし、権利を守る立場に立った、国への対応を求める。区長の見解は。

 

区の回答:憲法や国会法の手続きに従って、憲法解釈も含め、審議を経て成立したものであり、区として、意見を言う立場にない。

 

  1. ケアラー支援について

質問:区長の所信表明ではヤングケアラーを支援するために、福祉、子育て、教育など各部門が連携した取り組みを行うとのこと。私たちは、大人がすべき家族の看護・介護や家事などを担っている子ども自身が「自分はヤングケアラーなのかもしれない」と気づくことができる取り組みが必要だと考える。例えば、校内に「ヤングケアラーとは」とわかりやすく啓発するポスターを掲示するなど早急に取り組むことを要望する。さらに、子どもたち自身が気づき、相談できる窓口の設置などを求める。ヤングケアラー支援にどのように取り組むのか、具体的に示せ。

 

区の回答:教育委員会では校長会や教職員研修においてヤングケアラーの早期発見の重要性などについて周知を図っている。学校では、遅刻や忘れ物が目立つ、同じ服を着たきりである、学校を休みがちな児童生徒の中に、ヤングケアラーが存在する可能性があることに着目し、面談やアンケートなどを通じて早期発見に努めている。

ケアラーが抱える課題は、家庭の状況により多様であり、本人のみならず家庭の状況に応じた支援を行う必要がある。区では、学校や介護、障害福祉などの関係機関、子ども家庭支援センターや総合福祉事務所、生活サポートセンター等、どの相談窓口でも課題を受け止め、子育て、高齢者介護、生活困窮など、複合的な課題に対応できるよう連携した支援を行っている。

 

説明:日本ケアラー連盟によると、ケアラーとは「こころやからだに不調のある人の『介護』『看病』『療育』『世話』『気遣い』など、ケアの必要な家族や近親者、友人、知人などを無償でケアする人」のこと。最近では、日本語が第一言語でない家族の通訳もケアラーにあたるとしている。

2020年に埼玉県ケアラー支援条例が制定されて以降、北海道栗山町、三重県名張市、岡山県総社市が条例を制定し、茨城県でも制定に向けて動いているとのこと。

 

質問:家族のケアは家族がするものという考えのもと、ケアラー自身の心身の健康、仕事や学業などの社会生活などで様々な問題を抱えているにもかかわらず、社会的にケアラーを支援するしくみは不十分。ケアラーの定義、自治体・区民・事業者の役割、どのように支援していくかなどを明記したケアラー支援条例の制定が必要だが、区の考えは。

 

区の回答:改定アクションプランや次期教育振興基本計画の課題に、ヤングケアラーへの支援を位置づけ、福祉、子育て、教育などの各部門が一層連携して取組みを行っていく。新たにケアラー支援条例を制定する考えはない。

 

  1. ジェンダーに関する施策について

説明:専修大学の杉橋やよい教授は「個人に直接かかわらない領域、たとえば予算や組織・団体、資源・制度・政策などに関する統計データの場合でも可能な限り男女別に表されるべき。組織や団体についてはその構成メンバーの、資源・制度・政策についてはその利用者の男女別などのデータが示されることで、制度の施行状況や効果などのジェンダー差を浮き彫りにすることができる」と述べている。

 

質問:区において、男女共同参画をすすめるために男女別に集計している「男女共同参画に関する意識と労働実態調査」は、働く世代を対象に就労状況や職場の制度利用状況、ワークライフバランスなど労働に関わること、性暴力や地域活動、直近の調査では人権についてなど、多岐にわたる項目について男女別に示している。区が実施する調査、たとえば「高齢者基礎調査」や「障害者基礎調査」などあらゆる場面においても、男女別の統計調査と位置付け、調査の結果をジェンダー平等施策を進める視点で活用するとともに、区民にジェンダー平等施策として示すことが必要ではないか、区の見解は。

 

区の回答:毎年実施している「区民意識意向調査」において、性別、地域別、年代別の統計や過年度比較を行い、区政運営の基礎資料としている。高齢者や障がい者などの個別計画を策定する際の調査でも男女別で数値を把握し、計画や施策に反映させている。調査結果は、区報、ホームページで公開している。

 

質問:SDGs(持続可能な開発目標)でも、17ある目標のうちの一つに「ジェンダー平等を実現しよう」と大きく取り上げられているにもかかわらず、日本のジェンダーギャップ指数が下がりっぱなしなのは有効な施策がとられていないことの現れである。「効率的・効果的な」施策を実施するためにも、客観的な統計が必要。区としてジェンダー統計を実施することを求めるがどうか。

 

区の回答:2020年3月に策定した「第5次練馬区男女共同参画計画」の基本理念は「誰もが、人と人との違いを認め合い、暮らし、仕事、地域における多様な活動への参加や自らの希望に沿った生き方を選択できる『すべての人が輝くまち』」。多様な性・多様な生き方を認める意識の形成と啓発事業の強化、男性や事業者への啓発、女性への支援を重点取組としている。男女共同参画社会の実現に向け、全庁を挙げて本計画を着実に進めていく。

 

  1. 居住支援について

説明:区は、2019年度に区や不動産関係団体、福祉関係団体が連携する練馬区居住支援協議会を設置し、住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に関し必要な措置について協議してきた。練馬区の特性として住宅確保要配慮者のなかでも、高齢者、障がい者、ひとり親家庭を対象にした住まい確保支援事業を立ち上げ、2020年6月から居住支援法人3社と連携した伴走型支援の試行が始まった。今年度から当事者の相談を受け物件を探し内見に同行する物件調査、物件所有者との交渉や契約、転居までの支援、入居後の生活相談の3段階に分け予算化し、事業の充実を図っている。

 

質問:この間の事業の実施状況やどのような課題がみえてきたのか伺う。また、ひと世帯に対する伴走型支援の期間をどのように想定しているのか。

 

区の回答:不動産団体の協力を得て、高齢者等が入居可能な賃貸住宅の空き室情報を提供している。しかし、自分だけでは物件探しができない方がいるので、見学や契約手続きに同行して住まい探しを支援する伴走型支援を2020年6月から試行し、今年4月から本格実施している。これまでに33名の支援を実施し、うち14名が成約に至った。最短、1か月で成約に至った方がいる一方、支援を開始して半年を経過している方もいる。伴走型支援は、入居後の生活相談も行っており、一律に支援期間を想定できるものではない。住まいの確保事業では、これまで一人ひとりに応じた支援を実施、伴走型支援を含め引き続き取り組んでいく。

 

質問:居住支援の取組みとして、居住支援法人を居住支援協議会の構成メンバーとしている自治体も複数ある。伴走型支援の現場で見えてくる課題を協議会で共有し、住宅施策に反映させるためにも居住支援法人を協議会メンバーに加える必要があると考えるが、区の考えは。また、生活保護制度や生活困窮者自立支援法に基づく居住支援についても一元的に取組むことを検討すべきでは。

 

区の回答:協議会には、不動産団体や福祉関係団体などが参加している。居住支援法人はそれぞれ支援内容が異なり、得意分野があることから、必要に応じ協議会に出席してもらい、意見を聞いている。生活保護受給者などで住まい探しに困っている方についても、必要に応じて本事業による伴走型支援を活用するなど、連携して取り組んでいく。

 

  1. 環境学習について

質問:温室効果ガスの削減、使い捨てプラスチックゼロに向けての市民啓発、環境学習に区として早急に取り組むべき。学校における環境学習の現在のプログラムについて伺う。区は喫緊の課題である気候変動や海洋プラスチック汚染について、環境学習に盛り込んでいるのか。実施していないのであれば、今後実施する考えはあるのか。

 

区の回答:環境学習は、保育園、幼稚園、小・中学校、高等学校にわたり、幅広く実施いている。清掃事務所職員が、ごみの減量・リサイクルの取組みと課題を最新データや写真を使用してわかりやすく説明している。海洋プラスチック問題についても、2019年度には学習内容に組み込んだ。「ごみ・資源の分別体験」や「スケルトン車での収集作業の実演」は、好評であり、分別意識の向上に役立っている。

 

質問:副読本「できることからはじめよう」を練馬区独自で毎年作成し、小学4年生で取り組んでいる。しかしそこにはプラスチックが環境汚染につながることが詳しく書かれていない。品川区や杉並区の副読本には、プラスチックが地球規模の海洋汚染の原因になっていることや海の生き物が苦しんでいることなどが詳しく記載されている。今後副読本を見直し、さらに早い段階から環境学習を実施する必要があるのではないか。

 

区の回答:小学生の学習用パンフレットについては、より効果的な普及啓発を図るため、毎年内容の見直しを行っている。「気候変動や海洋プラスチック問題」についても、2022年度版から盛り込む準備をしている。

環境学習は学習指導要領において、全学年で教科横断的に取り組む内容として位置づけられており、理科や社会科等の授業において全校で実施している。気候変動や海洋汚染についても取り上げられている。

 

質問:実施方法について、子ども達には、データや動画・写真等を使って分かり易く説明することが大切であり、その理解の上で、自ら進んで調査活動や実践活動に取組む自主性を育むことに繋がる。このような工夫をして実施する考えがあるか。

 

区の回答: 子どもたちが問題意識を持ち、自ら環境の保護や保全に参画していくよう、引き続き環境教育の充実に取り組んでいく。

 

質問:東京都環境局の報告では、プラスチックを焼却し、その際に発生する熱による発電で排出されるCO2とリサイクルした場合に排出されるCO2の量を比較すると、廃棄物発電からリサイクルに切り替えることで、プラスチック1トンあたり、1.47トンのCO2削減効果が得られることがわかっている。

環境学習として清掃工場を見学した際に、ごみを燃やして発電していると説明していたが、発電量が多いことは決して良いことではなく、まずごみを減らすことをしっかり伝えるべき。

 

区の回答:清掃工場はごみ焼却して熱回収するだけでなく、ごみを減量する中間処理施設である。見学会では、ごみを焼却することにより容積が約1/20に減少すること、焼却灰をセメント等の原料として資源化することで最終処分場の延命に寄与することなどを詳しく説明している。ごみの焼却による熱エネルギーへの利用のPRが主眼ではない。

 

質問:リサイクルセンターやNGOによる出前授業等を積極的に活用することを提案する。区ではリサイクル条例の制定時に市民、市民団体が参加して制定した実績がある。省エネやごみの減量に取り組む市民団体の力を活用すべきではないか。

 

区の回答:リサイクルセンターなどでは、区民ボランティアがプラスチック削減等の各種講座を企画・開催している。近隣の小学校や地区区民館での出前講座も積極的に行っている。申込者が殺到する人気講座もあり、地域に根付き、普及啓発事業の基幹的な役割を果たしている。今後も様々な主体と協働し、普及啓発を進めていく。

 

  1. 子ども施策について

説明:区長は所信表明で練馬区教育・子育て大綱に合わせて、教育振興基本計画を見直すと述べました。目標は大綱と同じ「夢や目標を持ち、困難を乗り越える力を備えた子どもたちの育成」で、その実現に向けた今後5年間の取組みも大綱と同様に「教育の質の向上、家庭や地域と連携した教育の推進、支援が必要な子どもたちへの取組みの充実」を掲げている。

 

質問:OECD世界37か国における15歳児を対象とした学習到達度調査の2018年の結果では、日本は数学的リテラシーが6位、科学的リテラシーは5位となっていて、過去の調査を見ても上位にいる。その一方で日本の子どもの自己肯定感の低さは数年にわたり続いていて、将来に希望がもてない子どもが増えている。長年にわたり改善されないこの状況を改善するには教育において大きな転換が必要。教育委員会としてこの現状をどう捉え、自分が社会の一員として大切な存在だと思われていることを子ども自身が実感できるために、教育現場でどのように取り組むのか。

 

区の回答:区では、練馬区教育・子育て大綱に「夢や目標を持ち困難を乗り越える力を備える子どもたちの育成」を目標として掲げ、従前から自己肯定感を高める教育活動に取り組んでいる。授業における話し合いの機会を通じて互いの意見や考えを認め合うことや、行事や部活動などで困難を乗り越え達成感を得ること、小中一貫教育や地域の活動における異年齢の人々との関わりの場面で自らの役割を果たすことなど、自己肯定感を高める取組みを行っている。引き続き、子どもたち一人ひとりが自分の良さに気づき、可能性を伸ばすことができるよう、取組みを進めていく。

 

説明:子どもが被害者となる性犯罪が増え続けている。性暴力は魂の殺人と言われ、被害にあった後の人生に大きな影響を与える。昨年6月に決定した「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を踏まえ、文科省は「子供たちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校において『生命の安全教育』を推進する」として、教材および指導の手引を公表した。

この教材について、複数の研究者がいくつもの問題点を指摘している。教材を見ると、ユネスコが提唱する自分や周囲のからだのしくみを知ることから始まり、人間的な理解や調和にいたる「包括的な性教育」とは違っていて、子どもを性暴力の当事者にしないことが強調され、ネガティブな内容になっている。

 

質問:教育委員会は「どのように取り組むかは各学校で考えるが、中にはフラッシュバックする児童生徒もいるかもしれないセンシティブな内容であり、丁寧な対応が必要なので校長会と取り扱いについて検討を進めていく」とのことだ。性犯罪から子どもを守るために、幼少期から人権尊重を基軸に据えた性教育が必要。次期教育振興基本計画において、しっかりと包括的性教育を盛り込むことを要望するがいかがか。

 

区の回答:小中学校では、性教育に限らず、あらゆる教育活動を通じて、人権の尊重や男女平等に関する指導を実施している。また、学習指導要領に基づき、保健分野の学習を中心として子どもたちが性に関する正しい知識を身に付け、適切な意思決定や行動選択ができるよう、発達段階に応じた指導を行っている。

性行為や避妊などの学習指導要領に示されていない内容を扱うことは、児童生徒の身体的・精神的発達や、持っている性に関する知識の個人差に十分配慮すべきであり、すべての学校が一律に実施するものではない。校長の判断により実施する学校には、2019年3月に東京都教育委員会が配布した「性教育の手引き」に基づき、児童生徒の実態を十分踏まえ、保護者に丁寧な説明をした上で、理解・了解を得て実施するなどの慎重な対応を促している。「包括的性教育」について、教育振興基本計画に位置付ける考えはない。

 

質問:第5次練馬区男女共同参画計画には「NPO等による区立学校への出前講座なども活用して、性に関する知識の普及・啓発を図る」とある。今後区内の小中学校では、養護教諭や助産師、NPO団体と共同で教材や授業方法を研究し、出前講座を実施することを求めるが、考えを伺う。

 

区の回答:外部講師と連携した授業は、すでに産科医、助産師およびNPO等を招いて実施している学校があり、こうした場合においても、学校は保護者の理解を十分得ながら進めている。実施した学校の成果を情報発信するなど、引き続き取組みが広がるよう働きかけていく。

 

  1. 外環本線および青梅街道ハーフインターチェンジについて

説明:外環事業について自治体が保有する文書類を情報公開請求した市民の情報を調布市が漏洩するという事件が発生した。調布市は、外環道事業者3者から提供された情報を市独自で公開の可否を判断しかねるため、情報提供元に照会する手続きに際し、「個人情報保護への意識が希薄であったことによるミス」 と謝罪しているが、請求した市民の氏名住所等の個人情報が記載された情報公開請求書の写しを送付することは、単なる「ミス」ではなく作為に基づく積極的な行為だ。これは、憲法に基づく国民の主権者としての「知る権利」と人格権に基づくプライバシーの保護に反するとともに、地方公務員法第 3 4条(守秘義務)に違反しており、極めて重大な違法行為である。

 

質問:練馬区における情報公開請求の手続きについて伺う。区民から情報公開請求され、第三者照会を必要とした場合どのような手続きになるか、手続きの履歴を請求者が確認できるしくみになっているか。

 

区の回答:情報公開請求に係る公文書に、第三者に関する情報が含まれている場合、当該第三者の権利利益を保護し、公開の是非の判断の適性を期するために、公開決定等に先立ち、当該第三者に対し、公開についての意見書の提出を求めている。意見照会の際は、公開請求のあった公文書の件名、請求の年月日、当該第三者の情報の内容、意見書の提出先のみを示しており、請求者の氏名や住所などを情報提供することはない。意見照会に伴い、公開決定期間が延長となることから、請求者にはその旨を知らせている。

 

質問:第三者から開示反対の意見が返された場合、区は、区民の知る権利を保障する立場に立った対応が求められるが、区はどのように対応しているのか。

 

区の回答:公開・非公開の判断は、あくまでも第三者に関する情報が、練馬区情報公開条例第七条各号に規定する非公開情報に該当するか否かにより行う。その情報が、人の生命、健康等を保護するためや、公益上、必要があると認められる時は公開している。引き続き、練馬区情報公開条例等に基づき、情報公開制度を適正に運用する。

 

説明:陥没事故周辺世帯の補償、事業者の対応に対して住民が納得していない原因の一つとして、事業開始前、シールドマシン掘進前のデータがないということが考えられる。家屋調査は実施していても、地表面の変異がわかるような調査は実施していない。9月に発表された「東京外環事業連絡調整会議結果の概要」では、再発防止対策の策定や地盤の再確認のための追加ボーリングなど事業再開を前提とした対応が示されていている。

また、国はシールド工法の安全性向上を目指すとして「シールドトンネル施工技術検討会」を設置した。事業者や建設会社からヒアリングし、技術的に有効な知見を反映させたガイドラインを策定するとのことだ。

 

質問:事業者は、誰もが納得する陥没事故の原因究明をしないまま、再発防止対策を示し状況さえ整えば練馬側からの掘進を再開したいという姿勢だ。大泉ジャンクション部では保全措置として掘進したシールドマシンは、1基は地盤改良区域を通過し、もう1基もまもなく通過するところまで来ている。言い換えれば、事業用地と民有地の境目までトンネル工事が進んだことになる。シールドマシンが再稼働すればすぐに民有地に侵入する。住民の暮らしを守る自治体の責任として、少なくとも家屋調査の範囲は地表面と地盤も含めて再調査し、データを公開させるべき。区の考えは。

 

区の回答:事故を受け設置された有識者委員会では、陥没・空洞の推定メカニズムを明らかにして、再発防止対策の概要を取りまとめている。地域の安全・安心を高める取組みとして、事業地周辺のモニタリングの強化を掲げ、地表面変位も確認することとしている。人工衛星を活用し、広範囲にわたり変位の傾向を把握するとともに、交差する公道上において変位を測量し、その結果をホームページや現場付近に設置する掲示板で、定期的に公表することとしている。現時点で、家屋に影響を与えるような地盤変位は確認されていない。

 

質問:東京外環の沿線上には、石神井川、白子川、三方寺池、富士見池、石神井池、善福寺川、妙正寺川、善福寺池などがあり、豊かな水資源が緑豊かな環境を作っている。地域住民や環境団体は、事業開始前から地下水への影響を懸念していた。シールドマシンの影響で地中空洞が多数発生するなど地中の変化が明らかであり、それが地下水に影響することは容易に想像できる。東京外環の工事によって地下水に影響が出れば、緑豊かな地上の環境の変化につながり、生態系への影響も必至である。区の見解は。

 

区の回答:環境影響評価法に基づき、環境影響の予測・評価を行っており、環境保全対策を実施することにより、環境への影響は小さいと評価されている。地下水については、区内に28箇所設置した観測井戸で、継続的に地下水位のモニタリング調査を実施しており、現在、特異な数値は確認されていないと聞いている。引き続き、工事の進捗状況に応じて適時適切に情報提供を行うよう事業者に求めていく。

 

質問:青梅街道インターチェンジ計画について伺う。調布の陥没事故によって、事業再開の見通しが立たない中、青梅インター周辺住民はいつできるともわからない計画のために街が壊され疲弊していると訴えている。インター用地として買収されたのは面積ベースで約30%だが、それ以外の理由で空き地になったところもあり、地域住民にとってはそれ以上の空き地が拡がっていると実感している。また、防犯上の心配もある。事業認可されているため、土地利用に制限がかかっていることから、若い世代の住民の流入は期待できず、街の活力が急速に奪われている。

青梅街道インターチェンジ計画が明確になるまで、事業者と交渉し緑地として整備するなど検討すべき。事業者任せにして空き地のまま放置していることは、本来住民の暮らしを守るべき自治体が、道路事業のために住民の気持ちを萎えさせることに加担していると言わざるを得ない。区の考えは。

 

区の回答:区では、積極的に用地買収を進め、本計画の早期実現に向けて取り組むよう事業者に求めている。そのため、緑地等暫定的な整備を交渉する考えはない。青梅街道インターチェンジ周辺では、沿道にふさわしいまちづくりを進める必要があると考えている。地域の町会に、検討の場を設置することについて呼びかけているところであり、引き続きまちづくりの働きかけを行っていく。

 

意見:陥没や地中空洞が起きた地域では地盤補修が必要な状況になった。建物の基礎を支える「支持地盤」に影響が出たこと自体が、事業認可の要件が失われたことであり、法律に基づいて使用認可を取り消すべき。

被害住民を立ち退かせて地盤補修したり、新たな会議体を設置するのは、東京外環やリニア新幹線を強引に進めるためとしか感じられない。住民の暮らしを犠牲にする東京外環道は中止し、人権をないがしろにする大深度地下法は廃止すべき。

 

人間活動が引き起こしてきた環境破壊が、若者から持続可能な未来を奪っている。今、練馬区政に必要なのは地球規模での大胆な発想の転換であることを指摘して質問を終わる。