2021年2月9日 一般質問Q&A 質問者:きみがき圭子

練馬区議会 議会放映

 

1 脱原発のエネルギー施策について

Q2011年3月11日に起きた東日本大震災から10年が経つ。

東京電力福島第一原発事故により、放射能という見えない恐怖の中で、状況もわからず先の見通しも知らされないまま避難を強いられた県民の生活は、未だに元には戻らず、今も県外避難者が約3万人いる。生きる望みを失くして自ら命を落とされた方、避難が原因での家族崩壊、移転先でいじめや差別、心ない言葉に傷つくなど、原発事故は人々の命や生活も破壊してしまった。

2013年オリンピック招致の首相演説で、原発事故によりる汚染水について「状況はコントロールされている」と発言したことに、県民はもとより、多くの国民が驚き、憤りを感じた。汚染水のタンクは増え続け、タンクの劣化により漏れも発生している。帰還困難区域は一部解除されたが、戻っていいと言われても除染は一部だけでまだ放射線量が高い所もあり、政府は自分たちの都合のいいようにコントロールしているとしか思えない。

その上避難者への住宅提供や家賃補助を次々と打ち切り、行き場のない避難者を放り出している。復興予算も総額33兆円のうち、被災者支援はわずか2.2兆円である。

区はこれまで練馬区内への避難者の実態把握と支援をどのようおこなってきたのか。

 

A:2011年3月の原発事故の影響で、区内へ避難された方を支援するため、震災翌月に練馬区避難者登録制度の運用を開始した。震災発生から1年後の2012年3月には、最大181世帯487人の登録があった。当初は、住宅や家具の提供等を行い、避難者の日常生活の早期再建に取り組んできた。現在の登録は73世帯164名となり、予防接種や健康診査、就学援助などの行政サービス等を継続して提供している。また、練馬区社会福祉協議会においても、相談事業やイベントの案内などを行っている。

 

Qひとたび原発事故が起きると取り返しがつかないことを私たちは知っていたはずだ。だからこそ原発に頼らない社会をめざしてきた。ところが事故からわずか3年後、国のエネルギー基本計画において多くの国民が「原発はいらない」と意思表示したにもかかわらず、「原発は重要なベースロード電源」とし、2018年の第5次環境基本計画においても2030年に向けて再稼働を進めるとしている。

菅首相は温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を打ち出し、その対策を理由に一気に原発利用を進めようとしている。さらにこの冬の大寒波による電力不足も原発の必要性の理由につなげようとしている。そのような中、1月には東京電力福島第一原発の原子炉格納容器から高濃度の放射能汚染の場所が見つかった。10年経ってもこの状況である。

区もエネルギーの安定供給を理由に「原発は必要」と言い続け、エネルギービジョンから外す考えはない。「エネルギーのベストミックス」と言いうが、原発や火力発電に頼る施策は決してベストにはならない。

一番のエネルギー消費地である東京で暮らす私たちは、原発立地の方たちにどれだけ辛い思いをさせているか、住めない街を生み出してしまったのかをあらためて認識し、原発ゼロをめざして再生可能エネルギーによるエネルギーの地産地消をすすめるべき。

原発も必要と言っている区は、事故の重大さを認識し、脱原発のエネルギー施策へと転換すべきだが、あらためて区の考えを伺う。

 

A:原子力発電については、国のエネルギー政策で取り扱われるものであると考えている。区では、太陽光発電、家庭用燃料電池、コジェネレーションなど、分散型エネルギーの普及拡大に努めている。特定のエネルギー源に偏ることのないエネルギーのベストミックスにより、一層のCOの削減と、災害時のエネルギーセキュリティの向上を図り、自立分散型エネルギー社会をめざす。

 

<意見>

私たちには原子力も核兵器もない「核のない」社会を子どもたちに残す責任がある。

今年1月22日には核兵器禁止条約が発効したが、日本は署名していない。平和首長会議に加盟して非核都市宣言もしている区として率先して原発ゼロを宣言するとともに、国に対して条約への署名を求めることを要望する。

 

2 個人情報保護について

Q個人情報保護条例は国に先駆けて1980年の福岡県春日市、続いて川崎市、その後各自治体それぞれ独自の条例を制定した。練馬区でも「区民等に自己に関する個人情報を管理する権利を保障することにより、個人情報に係る区民等の基本的人権の擁護と、信頼される区政の実現を図ることを目的とする。」として2000年に制定した。地方自治体の条例制定から10年以上も遅れて国の個人情報保護法が成立した。

ところが開会中の通常国会に上程されているデジタル改革関連法案には、各自治体の条例の規定について、国の基準に統一する法改正が盛り込まれている。「行政機関、独立行政法人等、民間事業者と特定個人情報を含む個人」の3つの個人情報保護法の一本化と「自治体の個人情報保護条例の国基準への統一」をひとまとめにするものである。

条例の中で国より多い規定を設けている自治体が殆どで、独自の規定もある。練馬区も電子計算組織の結合に係る措置や要注意情報の収集禁止などを設けている。

今回の法改定で規定のバラツキを解消して国の規定、低い規定に統一しようとしていることは個人情報の流出や、国の監視が強まっていくことを危惧するものであり、地方自治を否定するものと考える。区の考えは。

 

A:今国会に提出されている個人情報保護法の改正案は、近年のとりわけ教育・医療・防災等の各分野において、官民や地域の枠を超えたデータの利活用が求められているため、全国的な共通ルールを規定し、国、地方公共団体および民間が、様々な課題に対応できるようにすることを目的としている。区としては、本法案の審議の動向を注視し、適切に対応していく。

 

Q個人情報保護制度の見直しに関する検討会の最終報告では自治体でおこなわれている審議会について「法制化後は法律による共通ルールについて国がガイドライン等を示し、地方公共団体等はこれに基づきあらかじめ定型的な事例について運用ルールを決めておくことにより、審議会等に意見を聴く必要性は大きく減少するものと考えられる。」と報告している。

「審議会は市民参加で個人の人権保障をチェックし、行政との信頼関係を築く機関として必要」と考える自治体も多く、国の個人情報保護委員会に権限を持たせることでの政府からの独立性や人権侵害の観点で意見が言えるのか疑問。区として今後の審議会のあり方をどう検討していくのか。

 

A:区の条例において審議会は、個人情報保護制度等の運営に関する重要な事項について、審議等を行う、区の附属機関と位置づけられている。今後、法案成立後に国から示されているガイドライン等を踏まえ、審議会の役割も含め検討する。

 

3 高齢者福祉施策について

Q国は、健康管理対策や介護予防のために健康診断や医療、介護などに関する個人データを利活用できるように関連法を改正した。

区は、健診や病院の受診結果などのデータから、糖尿病や加齢によって心身が衰えて虚弱になった「フレイル」と言われるリスクを抱える高齢者を抽出し、管理栄養士や歯科衛生士などの資格を持った健康指導専門員が個別に訪問したり、市民団体や民間団体と連携した介護予防教室につなぐなど、「高齢者みんな健康プロジェクト」を来年度予算案の目玉事業と打ち出しています。 
非常にセンシティブな個人情報を自治体が一元管理、利活用することについて、国会審議においても安全性が指摘されている。個人情報をどのように収集し、利用するのか、報道も不十分で多くの区民はほとんど知らない状況ではないか。訪問した専門職が、「個人情報漏洩だ」などと現場でクレームを受けないためにも、法改正も含めた施策の丁寧な説明が必要。区の取り組みを伺う。

 

A:新たに配置する、高齢者保健指導専門員による訪問相談にあたっては、個人情報の取り扱いについて研修を行う。事前に訪問の目的等を対象者に郵送で知らせるなど連絡を丁寧に行い、高齢者に寄り添って支援する。

 

Q:「高齢者みんな健康プロジェクト」は、介護保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度の会計がそれぞれどのように運用されるのか。

 

A:高齢者保健指導専門員の人件費は一般会計に計上し、教室事業や健診は、現在、各会計で実施している既存事業を横断的に組み合わせて取り組む。

 

Q計画の施策4では「介護だけでなく育児、障がい、生活困窮などの複合的な課題に同時に直面する世帯への対応が必要」と記されている。勉強や仕事をしながら家族をケアするヤングケアラーも課題として捉え、計画に明記すべきだ。

私たちは、ヤングケアラーは、学習面など学校生活に支障が出たり、将来の選択が狭まるなど人生に大きな影響を与えかねないので、社会の問題として対策するための調査を求めてきた。昨年の決算特別委員会で、具体的な事例があることがわかった。また、「教員やスクールソーシャルワーカーによる学校での早期発見、対応や、要保護児童対策地域協議会において、実態の把握に努める」と区は答えてきた。現場での努力に期待しするが、周囲に相談できずに孤立している子どもがいるかもしれないという視点が必要である。

昨年12月、厚労省はようやく、全国規模の実態調査に乗り出し、支援策を検討していくと報道された。調査結果を把握し、区の計画や来年度以降の事業に反映すべきだが考えは。

 

A:現在、国による実態調査が行われている。若年の介護者等への支援については、第8期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画に位置付け、引き続き、子ども家庭支援センター、福祉事務所、保健相談書等の関係機関が連携して取り組む。

 

Q介護する家族の経済状況は、介護を受ける当事者の在宅生活に少なからぬ影響を及ぼす。「介護離職ゼロ」は、在宅生活を支える重要な施策の一つだ。2015年に第2次安倍政権が福祉対策として「介護離職ゼロ」を掲げたが、仕事を退職して家族などの介護に専念するケースは後を絶たない。

区は2019年に作成した「仕事と介護の両立パンフレット」をどのように活用しているのか。

 

A:介護離職を防止するため、介護と仕事の両立を啓発するパンフレットを作成し、区民や事業者と勉強会を行うなど、介護離職零に向けて取り組んできた。パンフレットの内容は、区発行の認知症ガイドブックにも掲載し、啓発を進めている。

 

Q総務省の調査によると、介護・看護を理由に離職した方の直近のデータは2017年、約9万9000人。2008年からの10年間でみても年間10万人も存在している。介護休暇や介護休業などの制度はあるが、利用率は約9%。家族介護者への意識調査で「介護休業を利用したことがない」と回答した人は95.7%。そのうち「介護休業や休暇の制度を知らない」人が63.4%に上っている。

また、非正規雇用者も条件を満たしていれば制度を利用できることになっているが、適切に運用されているか懸念する。

次期計画に「介護離職ゼロ」の区の取り組みや制度の周知を明記すべき。区の考えは。

 

A:介護離職を防止するには、高齢者を介護サービスにつなぐとともに、介護者が一人で悩みを抱えないように支援することが重要。介護家族の会と連携し、介護経験者が相談に応じる「介護なんでも電話相談」の実施や、家庭で介護する方を対象とした「家庭介護者教室」の開催により介護者を支援している。介護者同士が交流する活動等の支援策について、第8期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画に位置づける。

 

<意見>

これまでの計画改定では、区民への説明会を開催したうえで区民意見を募集してきた。また、区民の要望に応じて説明と意見交換の機会を設けてきた。しかし、今回は新型コロナウイルス感染防止のためとはいえ、説明会の開催はなく、一方的な印象が否めない。

介護保険制度の変遷(へんせん)は「持続可能な制度」を理由に受給する権利が損なわれる一方だ。区は、介護険法に規定される「介護が必要な状態になったとしても自分らしさを尊重し、自立した日常生活を継続できる」ように、住民の立場に立って事業計画を立てることを求める。介護報酬は改正されたものの微増であり、エッセンシャルワーカーと言葉だけで適正な評価とは言えない。また、区民が負担する介護保険料にも影響する。

住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる制度について、税金と保険料を納めている区民が自分事として関心を寄せ、理解を深めるために、区は、財源を明確にしてわかりやすく説明する責任を果たすべきだ。

 

4 障がい児・者福祉施策について

Q練馬区障害者計画、第六期障害福祉計画・第二期障害児福祉計画は、計画期間の中で障がい当事者および家族の暮らしを支援するための事業の取り組みについて記されていると考えている。障がい者支援の従事者から、当事者に関わる人々の多様性がその方の暮らしの広がりにつながっていると聞いた。仕事として、ボランティアとして、友人として、有償・無償を問わず様々な方が関わることが求められている。しかし、現実には、関わりが無い方も多く、交流が無いために理解ができず、場合によってはそれが差別につながることもある。

計画書素案冊子の巻末には、事業説明を掲載しているが、当事者や家族、事業者以外の区民にはなじみがなく理解が難しいと感じた。これで意見を求められても、応じようがない。

障がい者差別解消には、何よりも障がい理解が必要だ。制度を知らなくても、この計画を読んで障がい児・者の生活がどのように改善されるのか、想像できるように表現すべき。区は、あらゆる機会をとらえて障がい理解の啓発に取り組むべきではないか。

 

A:現在、区民に計画の内容をさらに知ってもらうため、平易な言葉づかいでイラストを活用した「分かりやすい版」の作成を検討している。今後とも、障がい者団体等と連携し、障がい理解の促進に取り組んでいく。また、共生社会の実現には聴覚障害や視覚障害など、個々の特性に応じた多様なコミュニケーションを充実することが必要であり。「(仮称)障害者の意思疎通に関する条例」の検討に着手する。

 

Q新型コロナウイルス感染拡大が経済に大きな影響を与え、雇用状況を悪化させたことは明らか。障がい者就労についても、雇止めや就労環境への影響を踏まえたうえで次期計画を推進すべき。

「働く日数や時間を減らされて収入が減ってしまった」「生活のリズムが変わり、体調にも支障が出ている」「居場所がなくなった」など、大きな影響を受け困惑しているという訴えを聞いている。

次期計画策定にあたり、コロナ禍における区内の障がい者の就労状況をどのように把握したのか、また、次期計画にはどのように反映させていくのか。

 

A:次期計画策定に当たり、障がい当事者やハローワーク、就労支援事業所等で構成する「障害者計画懇談会」の開催や障がい者団体への意見聴取などにより、障がい者の就労状況の把握に努めている。練馬区障害者就労支援センターでは、今年度、65名の就職を支援した。新型コロナウイルス感染症の影響により、3名が失業したことから、再就職を支援している。障がい者が安心して働き続けられるよう、就労定着支援事業の充実や雇用支援セミナー等による雇用の促進について、次期計画に位置付け、個々の特性に応じた多様な働き方の創出に、引き続き取り組んでいく。

 

Q非正規雇用の増加や長時間労働、パワハラなど就労環境の悪化によって、精神疾患が増えている。障がいや病気などがあっても安心して働き続けられる就労の場はますます必要とされている。

昨年、私たちの仲間が、協同労働についての法整備を求めて約30年取り組んできた「労働者協同組合法」が成立した。会社に雇用されるのではなく、労働者が主体的に経営にも参画する「新しい働き方」で、多様な就労の機会の創出が期待されている。

地域課題に向き合い必要な機能を仕事として起こす、みんなで決めたルールに沿って働き、働きたいと願う人の能力を発揮できる環境や条件を協同で作り出す、そんな安心して働ける就労の場の創出の一環として、労働者協同組合の啓発、設立支援に練馬区として取り組むことを要望するが、区の考えは。 

 

A:労働者協同組合とは、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、組合員自ら事業に従事することを基本理念とする組織である。労働者協同組合法は、昨年12月4日に成立し、2年以内に施行される。組合の啓発・設立支援については、区内での動向を注視していく。

 

5 プラスチック削減について

Qプラスチックごみによる海洋汚染が地球規模で待ったなしの状況になっていることは広く認識され、日本でもレジ袋の有料化や紙容器への転換など、プラごみの発生抑制への対応が進んでいる。

日本における2018年度のプラスチック生産量は1,067万トンで、廃プラの排出量は891万トン。そのうちの208万トンが材料や製品としてリサイクルされている。

容器包装リサイクル法によって日本のプラスチックのリサイクルは進められてきたが、自治体によって取り組みがまちまちであることや、製品プラは依然としてごみとして処理されているなど課題が指摘されてきた。昨年5月に発足した国のプラスチック資源循環戦略ワーキンググループ合同会議はこれまで8回開催され、今年1月28日には今後のプラスチック資源循環施策のあり方について示された。

家庭から排出される容器包装プラと製品プラは、市町村での分別回収及び事業者による自主回収を一体的に推進し、最新技術で効率的に選別・リサイクルする体制を確保することが示されている。

具体的には、容リプラと製品プラを容器包装リサイクルルートを活用して、まとめてリサイクルできるよう措置することだ。

これを踏まえ、現在行われている通常国会に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が上程され、2022年度までに、これまで焼却されてきた製品プラを、資源として再利用することが盛り込まれている。これまで練馬区はリサイクル推進条例に基づき容リプラの分別回収を他区に先駆けて進めてきた。

製品プラの分別回収・資源化は、循環型社会の構築と同時に、海洋プラスチック汚染対策、2050年のカーボンニュートラルに向けての施策、また消費者にわかりやすいことなどからも、推進すべき施策。リサイクルを徹底してきた区には率先して取り組んでほしいが、どうか。

 

A:昨年11月、国の中央環境審議会は「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について」パブリックコメントを行ったところです。現在、国は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」の準備をしていると報道されている。

 

Q:区民への周知と区民からの協力が欠かせない。区報への掲載や区内4館のリサイクルセンターとも連携し、小・中学校で出前講座をするなども必要ではないか。

 

A:冊子「資源・ごみの分け方と出し方」による啓発に加え、ホームページや分別アプリにプラスチックごみが環境に与える影響について、写真を使った分かりやすい特集を掲載し、周知を図っている。また、リサイクルセンターでの各種講座や小学校でのふれあい学習などの機会に、具体的な行動につながるよう啓発を行っている。今後も様々な機会をとらえ、プラスチックごみの削減について周知を図る。

 

Qこれまで容リプラのリサイクルは生産者責任、製品プラの処理・処分は自治体のごみ処理事業と分けて分別をおこなってきたものを、分別から処理処分の方法までの再構築が必要となる。

また、一括回収し、リサイクル事業所に持ち込みとなると、中継所が必要になることもあり、量も増えるため経費も増す。

拡大生産者責任と同時に、補助金などの国の支援が欠かせないと考えるが、どのように受け入れ態勢を構築していくのか。

 

A:引き続き、国等の動向を注視していく。

 

6 子どもの権利擁護について

Q子どもへのいじめ、体罰、虐待などが社会的な問題になっている。特にここ数年、子どもの虐待死が相次いで起きている。

東京都は2018年に「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」を制定した。基本理念には子どもの意見の尊重と最善の利益を最優先することが盛り込まれている。その中に「保護者は、体罰その他の子供の品位を傷つける罰を与えてはならない」ことと「虐待を受けた子供が自ら相談しやすい環境及び体制を整備する」ことが掲げられている。体罰には子どもの権利条約にもある「精神的暴力の禁止」も含まれている。

国の児童虐待防止法でも「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して体罰を加えることをしてはならない」と示している。

早稲田大学教授で子どもの権利条例東京市民フォーラム代表の喜多明人さんが2019年に「若者を対象とした子ども期の家庭における体罰等の実態・意識調査」をおこなった。その結果、体罰については「誰にも相談しないほうが安全と感じる」と回答した比率が高いことがわかった。相談することで事態が悪化するのではないかという不安や、先生に相談しても真剣に聞いてくれないあきらめ感などが理由である。

区が都との合同で新しく設置した虐待対応拠点では、虐待を未然に防ぐ対応として保護者支援の充実をすすめている。

それと同時に必要なのは虐待を受けている子ども自らが相談しやすい環境の整備や子どもの権利擁護の視点での体制を作ることだ。相談先を書いてある子ども向けのカードを配布しているが、さらに「家族から受けている体罰は虐待であり、許されないこと」や「相談していいんだ」と子どもが思えるような意識啓発を今後どうすすめていくのか。

 

A:教員やスクールソーシャルワーカー、児童館職員などが子どもたちの話を丁寧に聞き取り、悩みを受け止めながら、子どもの最善の利益を優先して対応している。

 

Q:新型コロナ感染症がもたらした社会への影響は大きく、これまで以上に貧困や教育の格差が広がり、子どもたちも様々な困難を抱えている。虐待に限らず子どものすべてのSOSを受け止め、人権擁護・救済する専門機関子どもオンブズパーソンを設置すべき。区の考えは。

 

A:都児童相談所では、「子供の権利擁護専門相談事業」を実施し、子どもの立場に立った相談支援を行っており、区として専門機関の設置は考えていません。

 

7 練馬城址公園について

Q昨年8月に多くの人に惜しまれながら閉園したとしまえん遊園地は、あらたに練馬城址公園として整備が始まっている。東京都から「都市計画練馬城址公園の整備計画について」諮問を受けた東京都公園審議会は先月1月22日に「中間のまとめ」を報告し、都民意見を募集している。

計画では区域内を5つのゾーンに分け、区が要望した「水とみどり、防災、にぎわい」の3点がコンセプトとなっている。このうちの「にぎわいアクティビティゾーン」には整備される施設案として草地広場、水遊び場、樹林地、アスレチック施設、キャンプ場、多目的広場となっていてコテージやテントのイラストが描かれている。

しかし、このゾーンには2023年には民間施設、ハリー・ポッターのスタジオツアーが30年間にわたり開設される予定で、敷地の約1/3が高さ19mの建物になる。このことは注釈として小さく書かれていたり、後ろのページで説明されてはいるが、いつ直下型の地震が起きてもおかしくないと言われ区民の防災意識が高まっている中で、避難場所として期待を持つ区民は30年後のことより直近でどうなるか不安を抱いている。

ゾーン分けも含めた整備計画への意見は様々あるが、意見募集をするのであれば少なくとも民間施設の計画図をきちんと示し、丁寧な説明をする責任が区にもある。区の考えは。

 

A:区はこれまで都や民間事業者に、練馬城址公園やスタジオツアー施設の整備、運営について、区民への丁寧な説明と住環境への配慮を求めてきた。民間事業者は、地域の方を対象にスタジオツアー計画等に関する説明会を開催した。その後、意見を踏まえて建物の高さを低くするなど計画の一部を見直すとともに、質問、意見についての回答書を配布した。都は現在、公園の整備計画について、パブリックコメントを実施しており、これにあわせて区も協力し、オープンハウスを開催する。今後の公園整備から運営に至る各段階においても、区民への丁寧な説明を求める。

 

Q:審議会では「都民参画で様々な方、団体、企業に関わってもらう」との発言があった。区はオープンハウスや意見募集のことをホームページでただ知らせるだけでなく、区民の参画が実現できるように尽力すべきではないか。

 

A:整備計画には、「多様な主体と連携して、社会の変化に応えながら創りあげる公園」という計画テーマが設定されており、都は公園の管理運営等について、個人、NPO、企業、地域団体などが総合的に広く関わっていく考えを示している。

 

8 外環道について

Q昨年10月、外環道の大深度のトンネル工事の真上にあたる調布市の住宅街で陥没事故が起こった。その後3か所に地中空洞が確認され、周辺住民は「いつどこで陥没が起こるかわからない」「自分の家の真下が崩れていくのではないか」など、恐怖と不安の中での生活を余儀なくされている。

住宅街の真下を通る外環道について、沿線住民は工事前から地上への影響を懸念していたが、事業者は一貫して「地上への影響はない」と言い続けてきた。シールドマシンの掘進後に発生した、野川、白子川での気泡については「環境への影響はない」と言い続け、騒音や振動、低周波音による健康被害や家屋の損傷を訴える住民に真摯に対応してこなかった事業者への不信は募るばかりだ。

12月18日、事業者は中間報告でトンネル工事が陥没の原因であることを認めたものの、「特殊な地盤」を強調し、事故の原因が地盤のせいだと言わんばかりの姿勢である。不十分な事前調査や危機管理能力を欠いた事業者に、区内に2か所ある、工法も工期も未だに決まっていない世界最大級の難工事と言われる地中拡幅部の工事など任せられるでしょうか。

関越から東名間の事業施工期間は今年度末で終了する。2014年に事業費1兆2820億円、完成目標東京五輪ということで開始した外環工事だが、昨年の事業評価では、約2兆4千億円と当初の1.8倍に増加。事業費の増加額も開通時期も不明である事業の期間延長など認めず、工事の中止を求めるべきではないか。

 

A:外環は首都圏全体のネットワークを形成するとともに、都心部における渋滞や環状八号線などの混雑緩和、移動時間の短縮などに資する重要な道路である。区内においても生活道路への車両の流入を抑制するなど、交通環境の改善に大きな効果が期待される。事業者は、今回の事象を踏まえた十分な対応を行い、最新の技術力を集結させ、工事の安全・安心に万全を期すものと考えている。したがって、事業や事業認可期間延伸の中止を求める考えはない。

 

Q:大深度法は、地価が高騰したバブル時代に「大深度地下は安全、地上には影響を与えない」という論理をベースに地下空間の利用を促進する法律。「地下40メートルより下は地上の住民に断りなく公共事業に使用でき、地権者は補償の対象にならない」という制度である。しかし、陥没事故により大深度法の前提は完全に崩れた。住民の平穏な暮らし、命、一生かけて築き上げた財産まで奪いかねない。 所有権や基本的人権を侵害する大深度法は廃止すべき。区の考えは。 

区内の外環トンネルの上は、地上部街路「外環の2」が整備されるから住民には被害が出ないだろう、と区が考えているとしたら大きな間違い。命をないがしろにする公共工事は容認できない。

 

A:工事の実施に伴う損害等については、大深度法の規定にかかわらず、損害賠償等によって対応するもの。事業者は家屋損傷などの被害に対して、誠意をもって対応するとしている。大深度法の取り扱いについては、必要に応じて国が検討するものと考えている。

 

 

<最後に>

緊急事態宣言が一部地域で3月7日まで延長された。不安やストレス、対話の不足から人間関係までも壊れつつあることを危惧する。このような時だからこそ刑罰やバッシングではなくお互いに認め合い助け合える地域社会を築くことが必要である。

そのような中、JOC森会長の女性蔑視発言は人権意識の低さを露呈し、世界にまで波紋が広がっている。オリパラの開催に向けて都が制定した「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」にも反すると考える。コロナ感染症の終息がみえない中、オリパラの予算は膨らむばかりで根本的な見直しが必要である。

住民の福祉の増進を図ることを基本とする基礎自治体として、人権に配慮し一人ひとりに寄り添った区政をすすめることを求める。