2020年9月16日 一般質問Q&A 質問者:やない克子

練馬区議会 議会放映

 

1.区長の基本姿勢について

Q:区は4回の補正予算を編成し、医療提供体制の充実や区内医療機関でのPCR検査体制の構築などを実現したが、区民に十分な情報が届かず、安心につながっているとはいえない。「もし、自分や家族の感染が疑われたら、感染したらどうなるのか」、「PCR検査は必要な時に受けられるようにしてほしい」という区民の切実な声が後を絶たない。3月、4月の感染拡大当初のイメージが払しょくされていないのではないか。

区民の漠然とした不安に応えるために、新しい検査体制など新型コロナ感染症に関するメッセージを区長自らが発信すべきだが、区長の考えは。

 

A:区長は感染症の動向に応じて、区民にメッセージを繰り返し発信し、区の取組みを知らせるとともに、感染予防への協力を呼びかけてきた。何より現場の実情に即した有効な政策を立案、実行することこそが、大きな広報になると考えている。変化する状況を把握し、区民に分かりやすく知らせる観点から、適切な手法で、正確でタイムリーな情報発信に取組む。

 

Q:感染拡大で、これまでの制度改革で削減されてきた保健所の課題が露呈した。

今、必要なのは、新型ウイルスとその感染症の特性を徹底的に解明し、情報公開することであり、そのための疫学調査は不可欠と考える。

行政として公衆衛生的感染症予防に取組むための早急な支援と、今後、新たなウイルス感染症の発生が絶対にないとは言えない将来に向けて、保健所機能・体制の拡充や人材育成を国や都に強く求めるべきではないか。

 

A:1999年に保健相談所を6か所、全区的な対応が必要な業務を集中化し、効率的に実施するため、練馬、石神井の保健所を統合し、練馬区保健所とした。感染症対策業務については、現在、保健所1か所に集中化し、医師である保健予防課長をリーダーとし、チームとして効率的かつ専門性をもって行っている。

今回のように急激に業務が増加する場合には、速やかに職員の応援が行える体制を確保することで、機動的に対応できていると考える。国や都にも保健所の状況は伝え、必要な支援は求めながら対応していく。

会食や家庭内での感染が広がっている現在では、濃厚接触者等への積極的な検査による早期発見に集中する段階と考える。疫学調査の見直しを含めた今後の対応については、国への働きかけも視野に、各区保健所や都と協議を進めていく。

 

2.男女共同参画施策について

Q:生活者ネットは、男女平等の意識を高める、生まれ持った性別に違和感を持つ子どもたちへの対応などの視点から、男女混合名簿の導入をはたらきかけてきた。

今年3月策定「第5次男女共同参画計画」に区立学校において「男女混合名簿の作成を前向きに検討し、男女平等教育を推進する」と明記され、全校男女混合名簿が作成された。

名簿を作成して終わりではなく、男女平等、性の多様性を児童生徒、教職員が理解するための日常の学校運営が求められる。これまで継続されてきた習慣などの見直しが必要。今後の男女混合名簿の活用と男女平等教育の推進について、考えを聞く。

 

A:出席簿や授業参観の受付簿など、各学校の実態に応じて活用を進めている。一方で、男女混合の取組みを進めることのみが、男女共同参画を推進するものではない。各教育活動の目的や発達段階に応じて、人権の尊重や男女平等に配慮した教育を実施している。

 

Q:「標準服の選択肢拡大」も明記されている。「江戸川区立中学校の制服を性別に関係なく選べるようにしてほしい」と署名を区長に手渡した高校生は、女性として生まれ、現在は自らの性を男性と認識しているトランスジェンダーで「制服で苦しむことなく、自分らしさが尊重されるようになってほしい」と制服選択制の実現を訴えたそうだ。

標準服の運用については、生徒が主体的にかかわって検討していくことが望ましい。標準服の選択肢の拡大について、今後どのように取組んでいくのか。

 

A:各中学校が主体となって、生徒の声などを踏まえ、選択の幅を広げる取組みを検討している。

 

Q:内閣府男女共同参画局は「性犯罪、性暴力とは」のサイトに「望まない性的な行為は、性的な暴力にあたる」と明記。性犯罪は警察が認知したものだが、性暴力は警察に行かない、行けない、全てのものである。その認識を広め共有し、性暴力をなくし、もし被害に遭っても声を上げやすく、被害者の心身の回復に寄り添える練馬区であってほしい。

性暴力の被害者は、体への直接の被害だけでなく心にも深刻なダメージを受けているところに、さらに、他者からの無理解や心ない発言で二次被害を受けることもあるため、誰にも相談できずに孤立してしまう中で、自分を責めてしまうことが少なくない。「悪いのは加害者、あなたは悪くない」という姿勢が必要。

第5次計画に「女性への暴力やハラスメントの防止」が明記された。今後の区の取組みを示すべきだが考えは。

 

A:「配偶者等暴力被害者支援」については、被害者支援に向けて配偶者暴力の防止に関する啓発、相談員の資質向上に取組み、「暴力やハラスメントの防止」については、ストーカー、性暴力、セクシャル・ハラスメント等の防止、若年層への啓発を行う。庁内の全組織および関係機関と連携してすすめる。

 

Q:セクハラ、DV、性暴力の自治体調査の結果、共通する課題は「人権教育」としての性教育が必要だということ。区立小・中学校において助産師や保健師、産婦人科医など専門職または民間団体を招いての性教育を実施しているのは2018年度全34中学校のうち、6校だけだった。等しく学ぶ権利の視点からも、全校での実施が必要。区の考えを伺う。

 

A:性に関する教育は、学習指導要領等に基づき行っている。都の「性教育の授業」実施モデル校では、都の手引きに基づき、学習指導要領に示されていない内容を含む指導のあり方を研究するため、昨年度産婦人科医を招いて行う授業を公開した。モデル校の成果を踏まえ、適切に性に関する教育を行っていく。

性に関する知識の普及・啓発を図ることを目的としたNPO等による区立学校への出前講座については、現在、実施内容や時期、対象者や学習指導要領との整合などについて検討を進めている。

 

  • 私たちの調査からは、自治体施策として義務化されていない部分でのセクハラ対策、DV被害者支援、性暴力被害者支援の必要性への認識が総じて低いことを感じた。防止・相談・支援・教育など誰もが安心して暮らしやすいまち練馬を実現する施策を求める。

 

3.子どもの権利に基づく教育環境について

Q:新型コロナ感染症対策として学校が臨時休業になり、6月より再開、長い休校中の生活の中での課題に加えて再開後も十分ではない環境の中で新学年を迎えた。私たちには保護者からたくさんの声が届いた。多かったのは支援を必要とする子どもへの対応で、新学年になってあらたに配置された学校生活支援員の人数が少ないことへの不安の声である。支援員が足りず、保護者が付き添っているケースもある。一方で、支援員を経験された方の中には新たな会計年度任用職員の条件が合わず、仕方なく辞めてしまった方も複数いる。

感染症対策でこれまで当たり前だった学校生活が一変し、教員の負担も多く、児童生徒も慣れない環境で困惑することもあるはず。だからこそ支援の手がいつも以上に必要ではないか。

すべての子どもが安心して学校生活を過ごせるために、会計年度任用職員だけでなく、あらたな募集条件で学校生活支援員を増やすべき。区の考えは。

 

A:学校生活支援員の配置は、学校が必要性を精査し、その要望に基づいて行っており、保護者の希望のみをもって配置しているわけではない。子どもたちの学習や生活の支援等には、学校生活支援員の他に、地域連携事業を行っている協働活動支援員や学校サポーター、学習指導サポーターなど多くの方々が関わっている。現在も学校生活支援員については募集を行っており、今後も学校と調整し、人員の確保に努めていく。

 

Q:国連子どもの権利委員会は、今回の新型コロナ感染症のパンデミックに関する意思決定プロセスにおいて「子どもたちの意見が聴かれ、かつ考慮される機会を提供すること。子どもたちは、現在起きていることを理解し、かつパンデミックへの対応の際に行なわれる決定に参加していると感じることができるべきである」と表明した。

運動会や移動教室、学芸会など様々な行事が縮小や中止となり、子どもたちから目標や楽しみが奪われている。どうして中止なのか、縮小なのか、「コロナだからしかたがない」ではなく、その都度子どもたちにきちんと説明し、その中でできることを子どもたちの意見を聞き、一緒に考えていくことが必要だがどうか。

 

A:学校行事を中止や縮小したのは、感染予防のためにやむを得ず判断した。各学校・園においては、子どもたちの心情に配慮し、発達段階に応じて丁寧な説明が行われている。また、中止となった学校行事の代替行事について、各校の実情や、子どもたちの意見やアイディアを踏まえ、感染予防対策を講じてできる活動を計画・実施している。

 

Q:学校再開後の分散登校では多くの子どもたちから「先生とゆっくり話ができた」という声を聞いている。今回のことを臨時的な対応として終わるのではなく、少人数学級の実践例として児童生徒、教員それぞれの意見や課題を聞き取り記録に残し、少人数学級の検証をすべきと考えるが、いかがか。

 

A:感染症拡大を受け、教育再生実行会議が、少人数学級を推進すべきとの中間答申をまとめた。しかし、少人数学級の実現には、教員の大幅な増員だけでなく、限られた校舎スペースに普通教室を増設する必要があるなど、困難な課題を解決しなければならない。国などの議論の動向を注視していく。

分散登校時の対応は、少人数学級の実践例と直接のかかわりがないため、記録等にまとめ、検証する考えはない。

 

Q:オンライン学習は「すべての子どもの学ぶ権利の保障」の視点から、今回のような臨時休業だけでなく不登校や病気など、登校できない子どもにとって有効であると考える。しかし、重要なのは学校が教科を学ぶ場だけではないこと、直接の対話を通して場の雰囲気を感じ取り、けんかしたり仲良くなったり、様々な経験をしながら成長すること。教員にとっても子どもの表情や持ち物などから異変に気付く大事な場でもある。

年度内にタブレットを児童生徒全員に配る予定だが、教員の運用についての体制をどこまで整えているのか。また、学校におけるオンライン授業のあり方について考えを伺う。

 

A:教員のICT活用については、先行配備しているモデル校の授業公開、全教員を対象としたタブレット操作の講習会等を今年度中に実施する。授業における活用事例を共有するしくみを構築することで活用スキルの向上を図る。

オンライン教育は、集団での学び合いと個に応じた指導の両面で行うことで高い効果が期待できる。また、オンラインによる家庭学習、特に低学年の児童には、子どもたちの自由な発想を生かした学習と学校や保護者による適切な管理が必要。保護者と十分に連携を図り、個々の発達段階に合わせてきめ細やかなサポート体制を確保していく。

 

4.気候危機とエネルギーについて

Q:練馬区環境基本計画2020において、区のCO2削減目標は国と同じ2030年までに26%削減である。区は前倒しで削減していると言うが、豊島区は39%、品川区、江戸川区は40%削減、葛飾区や多摩市は2050年までに排出量ゼロを示し、計画をたてている。ゼロエミッション東京戦略においても2030年に30%、2050年に排出量ゼロを目標に掲げている。また、世田谷区長は「気候危機非常事態宣言」を発すると表明するなど、各自治体の役割は重要だ。

練馬区も環境審議会や地球温暖化対策地域協議会で、脱炭素社会に向けた取組みについて踏み込んだ協議をし、危機感を持った目標をたてるべきではないか。

 

A:本年3月策定の「区環境基本計画2020」には初めて「気候変動への対応」を方針の一つに位置付けた。気候変動対策は、日々の地道な改善を積み重ねていくことが不可欠。住宅都市練馬では、温室効果ガスの半数以上が家庭から排出されている。引き続き、区民と協働し、着実に取組んでいく。

 

Q:生活者ネットワークは今年2月から4月、国際環境NGO FOE Japan、国際環境NGO グリーンピースジャパンと共同で、都内62自治体の2011年度から2019年度までの本庁舎の電力調達や再生可能エネルギーに関する方針についてアンケート調査をおこなった。残念ながら、環境配慮方針に基づいていても必ずしもCO2排出量や再生可能エネルギーなど気候危機を重視したエネルギー政策につながらず、経済性を重視している自治体が多い状況だ。

電力小売り事業者の実績値一覧表を見ると、特別高圧でもCO2排出量が低く、再生可能エネルギーの割合が高い事業者もあり、実際に都庁舎も総合評価方式で落札している。

何を最重要な条件として電力を選ぶかが、その自治体の環境に対する意気込みを示す。区としても気候危機に対応した電力調達に切り替えるべき。考えを聞く。

 

A:電力の調達は、施設の規模や特性、供給電圧の種別などを総合的に勘案し、その時点で最適と判断した方法で契約を締結している。電力の自由化が進み、供給可能な事業者が増えてきたため、既に契約の見直しについて検討を進めている。

 

5.プラごみゼロ社会に向けた施策について

Q:この夏、街なかの自販機横に設置されている回収箱について、空き缶やペットボトルなどがあふれて周りにも散らかっている場所を調査したところかなり多くの場所が見つかった。散乱したペットボトルが細かく砕かれ、川から海にまで達し、海洋を汚染し、生態系をも脅かしている。

区として回収容器の設置や回収状況などを把握し、改善が必要な事業者に対し、指導すべきと考えるが、どうか。

 

A:練馬区ポイ捨ておよび落書行為の防止に関する条例では、自動販売機の設置者や管理者に、回収容器の設置とその適正管理を義務づけており、違反事業者には勧告ができる。遵守していない事業者等に対しては、適正に対応していく。

 

Q:私たちは容器包装ごみ処理への拡大生産者責任(EPR)を求め、中でもレジ袋の有料化運動を20年来展開してきた。今年7月1日、レジ袋の有料化が始まり、ようやく日本も抑制に向けて舵をきった。重要なのはこれを第一歩として、容器包装だけでなく製品プラスチックに至るまで、生産・利用抑制にすすむことができるかどうかだ。

国は「プラスチック廃棄物の一括処理」を打ち出しているが、いち早く容器包装リサイクルをすすめてきた区として、今後のプラスチックごみ処理についての課題を聞く。

 

A:7月に国は、文具やおもちゃなどのプラスチック製品もリサイクルの対象に加えるとの方針案を示した。環境への負荷低減に一定寄与するものと考えており、今後、法改正など国の動向を注視して適切に対応する。

 

6.化学物質対策について

Q:練馬区が化学物質過敏症を啓発するリーフレットを作成して約1年経過した。

「児童館でリーフレットが掲示されている」と当事者の方から連絡があった。これまで香りのことや化学物質過敏症のことに全く関心を示さなかった知人が、その掲示を見て話が通じるようになったそうだ。

香りの害「香害」は使っている本人に悪意が無くても周囲に影響を及ぼすことが問題であり、だからこそ啓発が必要。多くの区民の目に触れるように、区立施設での掲示など設置場所の拡大を要望するが、区の考えを聞く。

 

A:柔軟剤等の製品に含まれる化学物質に起因する問題については、製造・販売事業者が責任をもって対応することが基本。業界団体は、洗剤等の香料成分を開示する際の指針を定めるなど自主的な取組みを進めている。区では、引き続き周知に努め、業界団体や国の動きを注視し、必要に応じて区民への情報提供を行う。

 

Q:新型コロナ感染症対策の消毒剤によって、呼吸困難などの健康被害の訴えが増えている。残念ながら、感染症対策で少数の声があげづらい状況だ。

厚労省のサイトでは、手や指についたウイルスの対策は、洗い流すことが最も重要。ウイルスの数は、石けんなどで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせること、手洗いの後さらに消毒剤を使用する必要はないと明記されている。しかし、これが周知不足で、区内の児童生徒の保護者を対象に実施した調査では、校内の消毒剤を増やしてほしいと要望する人が多数いた。

手指の洗浄やアルコール消毒剤の使い方など、感染予防対策について、また、アレルギーがある子どもたちへの配慮など、児童生徒、保護者、教職員への啓発が必要と考えるが、どうか。

 

A:教育委員会では、5月に作成した「練馬区立学校(園)の感染予防のガイドライン」等に基づき、手指の洗浄方法について、手洗いが最も有効である旨の児童生徒への指導や保護者への周知啓発を行っているので、引き続き取組みを進める。

 

7.まちづくりについて

Q:新型コロナ感染症対策で国も都も区も財政状況がひっ迫していることは誰もが納得できること。区内各所の都市計画道路整備やまちづくりなどについて、今こそ、住民参加で見直しの議論が必要である。

感染拡大防止のための在宅勤務などの新しい働き方は、就労の場を都心から地方に移す可能性など、暮らし方、住まい方にも大きく影響し、オンライン会議のための防音室の設置など住環境に求めるものも変化するのではないかと言われている。

石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業については、そのような社会状況の中で、都心周辺の超高層住宅が今後も住宅取得のニーズとして続くのか、50年後の地域はどうなっているのか、など想像しながらまちづくりを見直すことが必要だが、区の認識は。

 

A:みどり豊かで良好な住宅地である練馬区の、駅前の利便な地に位置する本地区においては、今後の新たな社会の中でも、従来と変わらぬ住宅需要があると考える。引き続き、再開発事業の実施に向けて、着実に取組みを進めていく。

 

  • 天然痘、ハンセン病、近年ではHIVエイズなど感染症の歴史には常に偏見や差別が存在してきた。今回の新型コロナウイルス感染症でも当事者や医療関係者などに対する誹謗中傷があり、歴史に学んでいないことは残念である。あらゆる場面で、人権尊重の対応が実感できる区政運営を求める。